月別アーカイブ: 2009年8月

スーパー事件-2 男の子は弱虫

陳列棚のワンブロックがらいの
角を曲がって現れた男の子、
「ギャー」と、叫んで、顔色を変えて
オインオイン泣きながら
親の元に走っていくのです。
またまた泣かれたトレイス君
如何して良いか分らず、
逆におろおろです。

スーパー事件-2です。
スーパーで大型犬に出会うのは
子供にとって未知の世界でしょうか?
未だ10メートも離れているのに
大袈裟では有りませんか?
此の頃は男の子の方が弱虫です。

スーパーで子供の放し飼い?も
やめて欲しいです。
小さい子が好き放題に商品をいじり
公園のように駆け回っているのも
困ります。
時折、我らに激突されます。

スーパー事件ファイルー女の子の編

スーパーに買い物に行って、
レジの辺りでの事です。
突然!女の子が「ギャーオー」と、言う
悲鳴を上げて、泣き叫びます。
「何だ?何だ?」、
スーパーいっぱいに響く声に、
此方もびっくりです。

其れは、歩いているトレイス君の顔と、
其の女の子の顔が、
偶然にも同じ高さで、
突然に遭遇してしまったのです。
トレイス君は何時もの様に、
「可愛いね!」って、ちょっと挨拶に
顔を向けただけですが、
其の子は犬嫌いでしょうか?
唯、びっくりしただけでしょうか??

女の子に泣かれたトレイス君、気にして
「仲良くしたかっただけなのに」と、
家に帰るまでしょげ返っていましたね。

ほっ!!

夕方には つくつく法師やひぐらしが、
夏が行くのが淋しいのか、
ちょっと悲しげな声で鳴く様に成ります。
お盆が過ぎて、熱帯夜も無くなって、
もう直ぐ秋でしょうか??

昨日、隣りのばぁちゃんが退院してきました。
まだベットで寝てばかりなので、
窓に明りが点ったりもしないけど
隣りにばぁちゃんが居ると言うだけで
ほっとしますね。
「早く遊びに来て」と、トレイス君
ときどき隣りを伺ってます。

お盆の墓参り

    ダン吉の午後
・線香の香りの中で思い出す。
 「お爺ちゃんのお手伝いだ」と、ダン吉くんは勇んでいます。アスリートのスタート地点の顔をしています。見ている僕を無視します。お爺ちゃんの運転するトレーラーのハンドルにリードを掛けて貰い、お爺ちゃんと畑仕事に出かけます。エンジンがかかりギアが入り、さぁ出発です。ダン吉は力いっぱい引っ張ります。エンジンで動いているのだからそんなに力を入れても仕方がないと思うのですが、ダン吉は必死です。腰に力をいれ、身を低くして前足で地面を掻いて進みます。ダン吉は毎日お爺ちゃんと畑に行きます。畑ではトレーラーの運転席でお昼寝です。

 ある日、庭で変な音がするので出てみると、トレーラーがひっくりかえり、お爺ちゃんは声も出せず。倒れています。その横でダン吉くんは、お爺ちゃんの顔を見たり、怖そうにエンジンを見たりオロオロしています。年老いたお爺ちゃんはそれからトレーラーの運転をやめました。もうダン吉くんと畑にも行きません。

 その年の秋の初めの真夜中に、お爺ちゃんは救急車で運ばれていきました。出て行く救急車に向かい、ダン吉君はウォーン、ウォーンと泣くのです。その日の朝になっても、昼になっても、やるせない気持ちを抑えられないように、尻尾をたれ、右に左にと低い声で泣くのです。2日2晩泣きとうしました。
 そして、その冬、お爺ちゃんは、家に帰る事無く逝ってしまいました。
 自宅での葬儀でしたので、沢山の人の出入りがありました。でもダン吉くんは、誰にも吼える事無く、体を丸くして、尻尾で顔を覆い静かに丸まっています。かなり大きな犬だったので、他人は恐がったりするのですが、その日は立ち上がる事もしませんでした。
 「この子は良い子だね」と、お手伝いの小母さんも言います。
 「今日はワンワン言ってはいけない事を知っているんだね」と、感心されます。
 褒美に貰った器いっぱいのご馳走にも口をつけず、3日間うずくまったままでした。

 その日から僕はダン吉とお墓参りに行きます。花立に水を差し、墓前に水を上げ、線香を立てます。
 線香の煙が揺らめいて、その香りの中で、在りし日のお爺ちゃんを思い出します。
 でも、ダン吉くんは、「ワン、ワン、ワン」と、早く帰ろうと言う様に吼え続けます。

 「お爺ちゃんに逢いに来たんだろ」と、言っても、唯ワンワンと帰りを急かせます。

帰り始めると、ダン吉くんは安心した顔になり、無心に僕を引っ張ります。目の悪いよたよた歩きの僕を黙々と引っ張り家に連れて帰ります。我が家に着くと何故か、ダン吉くんはほっとした顔で座ります。 この頃はお墓参りは一人です。引っ張って連れて帰ってくれるダン吉くんも、線香の香りの彼方になりました。だから一人とぼとぼ、とぼとぼ足取り重く帰ります。 それから僕は盲導犬貸与の申請をします。今はダン吉君に良く似たおおらかな優しい顔の盲導犬トレイスとお墓まいりです。 トレイス君はお墓まいりが大好きです。お墓の方向に歩くときはとても勢いがあります。そして何故か帰りはのんびり歩きです。

お盆がえり‐4

 谷川から引いた冷たい水で顔や手を洗うと、
 「良く来た!良くきた!」と、庭先に出した涼み台に迎えられて、谷川の水でつめたく冷えた西瓜を、早速、切られます。僕には一番真ん中の処が与えられます。じゃりじゃりと歯ごたえがあり、甘いおつゆがいっぱいです。庭先で食べていますから、おつゆ溢し放題、種も飛ばし放題、大胆に食べれます。思い出しても此の時ほど美味しい西瓜は、ここ何十年も食べた事が無いですね。こんな美味しい西瓜は、もう出来ないのかも知れません。

 暑い日の午後は水浴び等したくなります。此の辺りの子は
谷川の浅瀬の所で泳ぐらしいのです。果樹園の先の水車の
水が流れ落ちる辺りは水遊びに丁度良い浅瀬で流れもゆるやかで、鮒や小魚が泳ぎ、カワガニも這ってます。でも、黒い大きな蛇が鎌首をもたげて、くねくねと泳いでいるのを見てからは二度と川遊びをする気には成りませんでした。谷の水は冷たすぎるますね。

 夕方に成ると、山の空気は急にひんやりして来て、我が家辺りでは聞く事の無い、カナカナカナと鳴く蜩や、つくつくぼうしが鳴き始めます。
 其の淋しげな虫の声を聞いたり、山がどんどん暗く暮れていくのを見ていると、とても悲しく成って、「腹が痛い」と、言って、父の里の皆さんを困らせた事が有ります。でも皆さんは
「どうせ、家に帰りたくなったんだろう」と、見透かされています。
 だが山の夜は真っ暗です。お風呂も便所も庭に在ります。よくは覚えていないのですが、僕はきっと縁側からオシッコさせてもらっていたんでしょうね。
 でも真夜中に目を覚ませて時はもっと恐いです。獣の吼える声が聞こえ、鳥の悲鳴に似た声が有ったり、木々のざわめきも、妄想が妄想を呼び、狼や羆が迫って来ているように思えたり、もっとお恐ろしい事が起こっている気がしてまんじりとも出来なくなり朝を迎えたりします。

 そんなスリリングでミステリアスなお盆の3日ほどを過ごして、下界の我が家に帰ります。そしてお盆はおわり、夏休みも終わります。

お盆がえり‐3

  父の里では僕が喜ぶだろうと、キリギリスや轡虫を、山の頂上の茅場から、父の里の年長の従兄が捕らえてきてくれてあります。それは僕のお土産になります。
 それから帰る日には、家から少し山に登った畑に西瓜を取りに行きます。畑は明るく開けた所に在って、瀬戸内まで見渡す事が出来ます。今年の夏の一番立派に出来た西瓜が
お土産用に畑に置かれています。それは見た事の無いほどの大きさで、いかにも美味しそうに太陽をいっぱい浴びて育っています。
 帰る時には誰かがバス停まで其の巨大西瓜を運んでくれ、バスに乗せてくれます。それから車掌さんに、僕と西瓜をちゃんと下ろす様に、くどいほど頼んでくれます。
 
 一度「捕まえた鯉をお土産にやる」と、父の里の隣りの小父さんが言ので、僕は隣りの家の少し浅めの堀に入って、鯉を追いかけまわして、洋服もびちゃびちゃにして、やっとの事で一尾の鯉を捕まえてお土産に貰って帰った事が有ります。檜の葉とビニールの風呂敷に包んでいて。手の中で
ぱくぱくしたり跳ねたりしてたのですが、可哀想にバスの中あたりで、其のお土産はまったく動かなく成って仕舞いました。 つづく

 

お盆かえり!‐2

 僕は未熟児で生まれ、ひ弱な体質だったので、
「此の山道を歩かせていると、もう来ないと、言い出すのでは?」と、父の里の父の両親であるお祖父ちゃんやお祖母ちゃんが、僕を背負う為に、其のバス停まで下りて来てくれるのです。まだまだ一般家庭には電話の引かれていない時代でしたから、連絡は取れません。何度でもバスの到着時間に下りて来てくれていたようです。
 僕が物心着く頃は、お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも死んでしまっていたので、暖かな背中の記憶も何も思い出せません。
 
 父の里に着くと、谷から引かれた冷たい水が勢い良く落ちている水槽の所で、皆で汗ばんだ顔を洗い、水を飲みます。
水槽には、僕の為に取って置きの大きなスイか、それにトマト、キュウリがぷかぷかと浮かんでいます。
 水槽から溢れた水は、畳二枚ほどの堀に流れ落ちています。其の堀には様々の模様の錦鯉や小さな魚が泳いでいます。叔母さんは其の堀で食器などの荒い物をするのです。鯉は其のご飯粒を餌に良く太っています。

庭には何羽かの鶏が放し飼いにされ、撒かれた餌や叩いた貝殻を長閑に啄ばんでいます。木陰では猫や犬が番をしているかの様に広庭を時折、薄目を開けて眺めつつ寝そべって居ます。牛小屋では黒い牛が尻尾でぱたぱたと蝿を追いまわす音がしています。 母屋の其の隣りに納屋が在って、其の先が一段低くなり、様々の果樹が植えられています。 崖にそって小屋が建て掛けられ、山羊と豚が居ます。 其の果樹園の外れには谷川が流れ、小さな水車小屋が作られて、米や小麦が突かれています。つづく

お盆がえり!

帰省ラッシュが続いてますが、
ユーターンラッシュも始ってます。

子供の頃は毎年、お盆の前後を
父の実家に行きます。
父は県境の山里からの婿養子です。
我が家からはボンネットバスに乗って
ブウブウ、ブウブウ警笛を鳴らしながら、
曲がりくねった道を登って行きます。
県境少し手前の駅で降ります。

其処には山から流れ落ちる川に
大きな水車がゴットンゴットン回っていて、
左手には、流れの曲がり角が淵と成っところから、
絶壁の岩山が山水画の様に聳えています。
木の小屋の待合所、そして木の柱が一本
立っていて、天辺にトタンを白く塗った丸、
それに駅の地名、柱に発車時刻表が
手書きでぶら下がっています。
今は同じ市内に成った此処ですが、
随分田舎に来た様な気がします。

父の里は、其処から山道歩いて、
山襞を一つ回った所の隠れ里のような
数軒の家が立ち並ぶばかりの山村の
其のまた一番奥に在ります。つづく

隣りのばぁちゃん闘病記ー7”

病室の前で待たせてください!と、
トレイス君は言われてます。
「ノー、駄目」 此処で待ってて、
ドアの前で座らせます。
とても入りたそうです。
それでドアを開けておきます。
トレイス君はドアの所に座って、
じーっと、ばぁちゃんを見ています。

ばぁちゃんはとても元気そうで、
もともと太っていたので病気窶れも無く
顔色も良く、声に張りも戻っています。
皆で、「安心、安心!」 ほっとします。
抜糸も終わったのですが、手術のあとが
突っ張って痛いのだそうです。
皮膚の表面では無く、肺の切除の傷が
痛んでいるのだそうです。
肺の四分の一を失くしているので、
酸欠になり易く、呼吸法の訓練もしています。

ばぁちゃんの入浴タイムに成ったので、
我らはお暇する事に、するとです。
入浴を知らせに来た男性看護士さんが、
トレイス君を見つけて、あーだ、こーだと
珍しい盲導犬に大騒ぎです。
その隙にトレイス君はばぁちゃんに甘えようとします。
ナースのお姉さんも出てきて、
「長ーいまつげのハンサムさん」と、行ってくれたり、
各、病室からも皆さん顔を出して、
珍客のトレイス君に注目です。
皆に「賢いね!」と、見守られて、
エレベーターホールまでスターの様に帰ります。
あー、うるさい看護士のオジサン、
未だ着いて来て、あれこれ言ってます。
トレイス君はオジサンは無視です。
ばぁちゃんやナースのお姉さんの仲を邪魔され
ちょっと機嫌悪るです。

でも、トレイス君のお陰で、ばぁちゃんも病院の方々も
気分転換の一時のお見舞いに成りました。

広い廊下やロビー、と、ホテルの様な病院を出ます。
高くしてある玄関に立つと、
ずーっと見渡せる水平線の辺りが
薄曇の空の下、明るく透けて来ています。

隣りのばぁちゃん闘病記‐7

トレイス君とばぁちゃんのお見舞いに行きます。
友だちに攣れて行ってもらいます。
「わー!大きな病院」
郊外の住宅地の真ん中に在る
とても立派な新しい病院です。

「盲導犬も入って良いですか」と、
受付でお聞きします。
「取り合えず7階のステーションまで
どうぞ」と、言われます。
我らはエレベーターで7階に
広くって迷いそうです。
どうにか病室の在る
ナースステーションに到着します。
「病室の前まで」と、案内してくれます。

ドアを開けた病室にばぁちゃんの姿を
見つけたトレイス君。
「ばぁちゃん」と、飛んで行こうとします。