月別アーカイブ: 2009年10月

餅しゃぶ と 醤油アイス

鯉が泳ぐ用水路も在ります。
トレイス君は真剣に観ています。
竹細工や紙張子の民芸店に入ります。
しかし古い民家を利用した店内は暗く見えません、
少し触らせて頂もしましたが・・・
骨董屋の宝探しは出来ませんでした、
知らない店の、薄暗い店内は気後れがして入れ無いです。
またいつの日か、骨董好きの友人ときましょう。

昼食は名物?「餅しゃぶ」です。
薄く剥いだ餅を、しゃぶしゃぶして食べます。
しゃぶしゃぶはトラベルボランティアの小梅さんが
程よい加減にして、僕の器に入れてくれます。
僕は器を持ち上げ掻き込みます。
大きな野菜は小さくしてくれます。
それも残らず掻き込みます。
餅しゃぶ屋さんは古い民家ですが、
我らの席は中庭で明るく、バーべキュの様な趣も在って
楽しめます。

食後は醤油アイスです。
餅しゃぶ屋さんを出て直ぐが醤油屋さんです。
其の店内で、ほんのり醤油の香りのアイスを賞味です。
口がさっぱりしましたね。

そして、江戸情緒満点の倉吉を後にします。

白壁と赤瓦の街

五十分で憧れの街、倉吉に到着です。
松江と同様、ずーっと来たかった街です。
何十年も前ですが、
骨董好きの友人がです。
山陰旅行で物凄く良い掘り出し物を
見つけて帰ってきて、見せつけられたのです。
その宝の山が在る所は倉吉です。
それもあって早く行きたかったのに、何十年も
掛かってしまったのです。
瀬戸内から山陰は、東京より遠いです。

倉吉では地元の男性トラベルボランティアさんも参加です。
我ら障害者の旅人に幾人の人が協力してくれるのか!
スタッフさん二名、ガイドさん5名 わー!感謝です。
倉吉駅は何処にでも在る様な地方の小さな駅です。
古い街波にはバスで少し行くようです。
倉吉未来中心ってバス停が在ります。
もしかしてUFOでも来るのでしょうか?

大きな商家が立ち並ぶ街並みは
やはり何処かに日本海側の街らしい、
寂寥とした趣があったりします。
観光地としてはあまり作り込まれて無く、
自然に古く成った街と言う感じです。

観光犬トレイス君は、瓦屋根にも、
格子窓にも、飛び交う小鳥にも、
そよぐ風にも、流れる水にも、何にでも興味津々
ガイドさんの説明にも耳を傾けます。
「凄いねー、何でも分るんだねー」と、
スタッフさんが関心しきりです。
トレイス君が僕の目に成って観てくれているのでしょうか?

負傷兵ですか?

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松江の夜明けです。
駅前ホテルの9階から見る松江の街は広々としています。
此処から向こうには高い建物も見えません。

朝食はバイキングです。
スタッフさんが沢山取って来てくれます。
今朝は頼りのみほりんさんが居ないので、
パンやウインナーなどほとんど手づかみで食べます。

今日は(13日)倉吉に向かいます。
駅に着くと、鳥取からトラベルボランティアの方々が
迎えに来てくれています。
今回は島根県と鳥取県の共同事業です。
僕の担当ガイドさんは、一昨年「盲導犬と泊まる和旅館」の
企画でお世話に成った、小梅さんです。
小梅さんは其の時の経験を生かして、
ポケットのいっぱい付いた洋服にわんちゃんグッズを
直ぐ出せれるように用意してくれています。
自分でも言ってましたが、大粒の小梅さんで、
とても頼りがいの有る人です。

賑やかに話し弾んで、我ら一行は
のんびりした雰囲気の列車で倉吉に向かいます。
「こんな姿の人、昔見たよね」と、
白い三角巾で手をつって、サングラスを掛けて、
傷だらけで旅している僕の姿を見て誰かが言うのです。
そうそう戦後、よく見かけた
傷痍軍人さんの事を言っているようです。
極めつけは「そうだ、白い犬もつれてたよね」です。
ワン吉は負傷兵になってしまいます。

他山の石を・・・

今回のモニタリング旅行は
視覚障害の僕一人と肢体不自由で車椅子の二名
計三名の小さなツアーです。

車椅子の若い男性は体全体にマヒが有ります。
声も出にくいのかキーボードを叩いて音声化しています。
特製食器も持参です。
滑り止めの着いた皿置き台に
自前の食器を置いて、料理を移してもらい
これも食べやすい様に工夫されたスプーンで食べてます。
ただいま重複障害中の僕も、自立するには
工夫が要ります。今日はみほりんさんに甘えました。

家に帰って、少し傷の痛みが和らいだ時、
パソコンをしたかったのですが。
いつものピアノタッチでは右手のギブスが邪魔して、
間違えたキーを押してしまいます。かと言って
左手だけで見えないキーボードは叩くのは苦難の技です。
其の時、ふっと思ったのです。
車椅子で手にマヒの有る方が、
一本の棒を口に咥えたり、手に固定してキーボードを
叩いています。「そうだ、これだ」と、思いついたのです。
指を帽の様に真っ直ぐにしてみよう!
右手首の骨折ですから、ギブスから指先が出ています。
手をバレーダンサーの爪先立ちの様にして、
キーボードの上でダンスをさせるのです。
最初は間違えたキーを押したり、疲れて手が斜めになると
ギブスの先がキーに触れて、変換されてしまったりです。
でも何事も慣れですね、
此の頃はだいぶ早く打てるようになってます。

あっ!話しが少しそれました。
としまるさんたちにトレイス君のトイレ出しを
手伝ってもらい、お別れです。
みほりんさんありがとう。ノア君おやすみ!
少し雨がふったみたいで、並木の路上は濡れてます。
「またお会いできる日を楽しみにしてますね」

それから僕はホテルのスタッフさんと、部屋に帰ります。
部屋の様子、お風呂、湯沸しなど、備品の事
細かくあれこれ説明をして頂きます。
今夜は介助無しの一人寝です。
部屋はツインですが、一個のベットを隅に押しやり、
トレイス君の為に広く使えるように配置を換えてくれてます。

「あー!夜になると傷は痛みます」 
温泉ではないので、さっとシャワーを浴びて
化膿止めと痛み止めの薬を飲んで、早々に寝ます。

スプーンいっぱいの幸せ!

今夜の泊りは温泉では有りません。
宍道湖温泉から、駅前ホテルに変更です。
だから、直ぐ我らの夕食タイムです。

怪我をして数日、食事と言えば、
お握りやパン、手づかみで食べれる物に
限定しております。でも今夜は
会席料理のご馳走です。小鉢もいっぱい
「どうして食べようか」 思案です。
ホークやナイフもお借りします。
「まず お刺身から」 ホークで挑戦です。
なんとか無事刺さって「凄い!」と、
スタッフから褒められますが。
あー、その後はうまく行きません。
お皿の上の食材がどんな状態か見えないのです。
闇雲にお皿の上をガチャガチャです。

其の時、島根ハーネスの会のとしまるさんと、
奥さんのみほりんさんが到着、会食に合流です。
寝そべって居たトレイス君は、飛び起きて
ノアくんとひとしきり旧交を温めます。
みほりんさんが我が困窮を察して助け舟です。
僕の差し出すスプーンに、料理の説明を加えながら
程よい大きさにしたご馳走を乗っけてくれるのです。
あー、これで、皆さんのお話しにも参加しながら、
料理も美味しく味わう事が出来ます。
これぞ、まさしく 「スプーンいっぱいの幸せ・・」 
いっぱいは唯一杯では無く、たくさんのいっぱいです。

最後は宍道湖名物「しじみ汁」です。
「おつゆを味わうだけでもいいが」と、言う人も居ましたが、
天使の様なみほりんさんは、
実を一つづつ取り出してくれます。
それを松茸ご飯と頂きます。「あー美味しい」
だいぶ調子の着いてきた僕は
ほとんどトレイス君のようにがつがつと
器に口をつけ、わんわん食いで掻き込みます。

心残り

「後で宍道湖の夕日スポットへ」と、
言われていましたが、
夕刻に成ると、空が黒い雲に覆われ
今にも一雨来そうな雰囲気です。
「これじゃ夕日は見えないね」、
せめて宍道湖の湖畔の散策でも、と
思っていたのですが、
ガイドさんは帰ってしまうし、
スタッフさんは何かと忙しく、
宍道湖の夕日は、次回の楽しみと成ります。

松江の心残りがもう一つ、
松江は和菓子所です。
美味しい和菓子出のお茶の時間が無かったです。

そんな事を思っていると、
トレイス君が空腹を訴えてます。
「そうだねぇ、早く家を出たもんね」
ホテルのチェックインが手間取ってます。
「じゃ、トレイス君食事にしますか」 
トレイス君はホテルのロビーでお食事タイムです。

宍道湖の夕日

堀川遊覧の最後の方では
とても低い橋が在ります。
すると遊覧船の日よけの屋根が
ぐーっと下がってきます。
「わ、わ、わ!」 痛い胸を我慢して
一生懸命 身を屈めます。
トレイス君はびっくり顔でおろおろしてます。
「ワン吉君を守ろうとしてるんだね」と、
ガイドさんが言ってくれます。
いい天気で、気持ちの良い遊覧がおわりです。

バスでホテルへ向かいます。
丁度のバスはタラップが壊れていて、
車椅子が乗り込む事が出来ません。
一台待つことに成ります。
バスは来た道を帰ります。
カラコロ工房を左に、右手はカラコロ広場、
広場からは秋祭りの山車の太鼓の音が響いています。
小泉八雲がカラコロと下駄を鳴らして渡った
宍道湖大橋です。
午後四時、秋の日暮れは早く
宍道湖の向こうの空はかすかに
入日に染まり始めています。

観光犬の堀川遊覧

それから我らは松江城へ向かいます。
内堀を渡り、大手門 跡です。石垣しか残っていませんが、
其の幅からして、大きな御門が在ったのでしょう。
左手奥に天守閣が聳えているそうですが、
残念、僕の目には見えません、それに今日は登りません。
松江城は盲導犬も登って良いのだとか・・・

我らは堀川遊覧船に乗り込みます。
こんなに外堀、内堀と残っている城郭は珍しいです。
大体外堀は埋められ、内堀だって半分も残ってません。
瀬戸内の山と海のちかい、ちまちました所から来たので、
ゆったりとした伸びやかな景色がうらやましいです。

遊覧船は左回りに進みます。
まず右手には武家屋敷の街並みが見えてきます。
此の辺りは江戸時代そのままです。
トレイス君と散策したいです。
船頭の小父さんがガイドです。素朴な語り口が良いですね。
トレイス君はとても興味津々。一番前に陣取って、
真剣に前を見詰め、熱心に説明を聞いてます。
「右うしろを見てください」と、指示が有ると、
さっとトレイス君は其方を見たので、
「わっ!分ってるんだ!」と、皆さんに関心されます。

金庫に受刑者の・・・

バスはカラコロ工房に到着です。
ネオクラシックな堂々とした西洋建築の
旧日本銀行を利用した施設です。

まず銀行当時の地下金庫のギャラリーから見学です。
物凄く分厚い金庫の鉄の扉を触らせてもらいます。
ギャラリーでは各地の刑務所から
受刑者の工芸作品展が開かれています。
金庫に受刑者、ちょっと微妙な感じです。

ガイドさんは僕のギブスの右手を腕組みの様な
態勢で案内してくれます。
一生懸命やってくれているのでしょうが
それが、金庫破りの護送に見えそうで・・・
わー!其の時テレビの取材が入ります。

それから、中庭で勾玉造り体験です。
めのうを削るのじゃ大変だな、と思ったが、
黄色っぽい、柔かい石です。
鑢でどんどん削れていきます。
指導者の方が「上手、上手」と、煽ててくれるので、
調子に乗って頑張ります。
左手だけでも何とか出来ます。
手に麻痺のある車椅子の彼も上手に出来て
紐を通して首に掛けてもらい満足顔です。
幸福のお守りです。

バリアフリーは・・

今回のモニタリングツアーは
公共交通機関を使っての移動です。
路線バスに乗り込みます。
松江には路面から車椅子が乗り込める
車体の低いバスが走っています。
乗り込むと車椅子が2台ほど停止できる
スペースが空いています。
「さすがバリアフリー先進県です」
そして観光ガイドさんがガイドヘルプもして
頂けるので、街の案内を受けながら安心にしていられます。

あーそうそう、来る時の八雲の車中です。
一度トイレに行きたくなって、トレイス君と揺れる
車中を歩いたのです、ガタゴトしています。
右手が使えないのでどこにも掴まれません。
トイレが連結器を渡らなければいけないのです。
トレイス君は危険な所は行こうとしません、
ここでこけて足でも折れては大変です。
一度座席に引き返し車掌さんの助けを待ちます。

それと特急八雲の車中では
観光案内が有りました。
大仙、花回廊、峠の分水嶺など
アナウンスが流れます。
旅行しているって気分が出て良いですね。
峠辺りの窓辺には木々の色づきが始っていたでしょうか?

バスは外堀川から松江城の方に向井ます。
左手に宍道湖を望みながら走ります。