月別アーカイブ: 2009年12月

隣のばぁちゃん闘病記‐大晦日に

今日は朝から霙なんか北風に舞って、
寒波の中の大晦日です。
隣のばぁちゃんが昼前に
「混ぜ寿司作った」と、ひとパック持って来てくれます。
「もうふらふら」と、言ってます。
「くたびれたの」って、聞いたら
「いやー、足が痛くって!」です。
11月に4回目の抗癌剤投与があって、
骨の節々の痛みから、手足の痺れがあるようです。

おやつ頃には「おはぎだよ」と、持って来てくれます。
孫たちが来て丸めるのを手伝ってくれてます。
「わーっ!僕の好きな物ばかりです。
秋頃にです。母の作った混ぜ寿司が美味しかったね!とか、
母のおはぎは恰好が悪いけど美味しかった!食べたいな!
と、亡き母の味を懐かしんで話した事が有りました。

隣のばぁちゃんの癌治療が始って、僕は自炊です。
たいした物を食べてないのが見え見えです。
「可愛いそうに」と、思って、
頑張って作ってくれたのでしょうね。
母の味に良く似ています。
母よりはちょっぴり甘目かな。
でも涙が出るほど美味しいです。
涙が出るほど嬉しいです。

「少しでも歩いてないとね」と、
以前なら「取りに来て」と、電話が有ったのですが、
今日の様な、凍える寒さの中を歩いて来てくれます。
「一月からはフラダンスの練習に行くのだ」と、言ってます。
踊る事は出来ないだろうが、
何かやってないと足も体も気力も駄目に成ってしまうから、
と、決意を話します。

隣のばぁちゃんの病気が良く成りますように、
新年の神さんにお祈りします。
今年は大変な事ばかりでした。
2010年が良い年にしたいです。
良い年で有って欲しいです。

ドイツ人も注目!

あ!そうだ、ドレスデン絵画館も盲導犬入館拒否です。
ガイドさんの交渉でやっと入る事が出来ます。
此処でもトレイス君達は絵画館初の入館犬なんでしょうか?
「私は顔パスよ」と、現地ガイドの
ドイツの女性(オバサン)が言ってます。
此のガイドさん、陽気な人で、解説の口調が面白いです。
画家や絵画の裏話などをする時は声をひそめ、
ゴシップ話しは声色を作って、一人芝居です。

添乗員さんはO女史に遠慮してか、
僕に近づか無く成ってます。
展示室の移動や何かにつけ、
そのガイドさんがサポートしてくれます。
「この辺でオシッコさせても良い」と、
絵画館を出た前庭で聞きますと、
並木の根元にも案内してくれます。ほっ!

我らは、旧市街の真ん中に有るホテルにチェックインです。
チェックインして直ぐ、
ドイツ最古のクリスマスマーケット散策と夕食に出掛けます。
クリスマスマーケットは我らのホテルを出て、
古い建物郡の後の電車通りを渡ると、
大きな市が広がっています。暫し散策です。
ベルリンよりとても広く、整然としています。
楽隊も出ていて賑やかです。暫く聞きます。
「スリが居ますよ」と、言われバックを押さえます。
その後、皆さんは散り散りに散って
我ら障害者の4人は取り残されて居ます。
マーケットの真ん中のシンボル・クリスマスツリーの
下まで行って写真を撮ってもらいます。
また、ホットワインの良い香りです。
全盲のお父さんが「飲みたいなぁー」と、言うので
我らもお付き合いです。
「トレイス君を皆が見てるよ」と、車椅子のWさんが
教えてくれます。歩いている時も、いつもトレイス君は
ワンちゃん好きのドイツ人の注目の的です。

誰もが好きな絵が・・・

もう暫くメルヘンの世界で遊んで居たいですが、
次の目的地ドレスデンに向かわねば成りません。
ドレスデンの絵画館に五時までに入らねば成りません。
絵画館は明日月曜日は休館なんです。

雪景色がだんだん薄くなって、
夕闇の迫ってきた頃、ドレスデン絵画館前に到着です。
「トレイス君にオシッコさせたい!」と、言ったのですが、
誰も聞いてくれず、皆さん足早に絵画館に入っていきます。
仕方なく我らも続きます。
バスの中でたっぷり水を上げました。ちょっと、心配です。

暗く成って着いたので、絵画館は果たしてどんな建物か?
入り口はどんな具合だか?全く分りません。
美術館にもその国の特徴がありますね。
名画が並ぶのに華やかさは無く、ドイツ的質実剛健です。
「あっ!メインの名画です」、
アウグスト強王が教区一つを買えるほどの値段で買った
ラファエロの「サン・シストの聖母」です。
そして、最後の方にフェルメールの
「手紙を読む女」が在ります。
象徴的で分り安く、誰もが好きに成る絵画です。

「あー、し・あ・わ・せ」
「此の2点を見るのが旅の半分の目的だったの」と、
興奮した女性が騒いでいます。
聖母像の下に二人の天使が居るはずです。
「ね、どの辺に居る?」と、その女性に聞きます。
親切に画面の真ん前で、僕の手を取って、
画面をなぞりながら説明してくれます。
目をごしごし擦ってもかすみは取れません。
目を見開いても見えません。
「手紙を読む女」も、同じく説明してもらいます。
白い壁に一人の女性が立つだけのシンプルな画面です。
でもただただグレーで女性の姿が浮かんできません。

たじたじですが、気を取り直して・・

昼食を終えて外に出ます。
ぶる!汗をかくぐらいのレストランでしたから
雪の外は「さむい〜」 冷え冷えです。
そうそうトレイス君にトイレをさせなくっては、
此れから一時間、此のおもちゃの村の観光です。
「すみません、トレイスの
オシッコさせれる様な所在りませんか」と、
レストランの入り口辺りで誰とはなしに聞きます。
するとです、「皆、初めての所だから分る訳無いでしょ」と、
O女史の一言です。えー!何、その答え!たじたじです。
でも、誰かが「此の辺りだはどう」と、
大通りの脇道を教えてくれます。
無事オシッコ完了です。

何だか気分は萎えますが、しょげって居ても仕方が無い、
景色に買い物、観光を楽しみましょう。
まず玩具博物館です。暗い!
此処では車椅子さんに掴まらせて頂かねば危ないです。
暗い上に細かい玩具ばかりで見えません。
車椅子のWさんが「お土産を買いたい!」と、言うので
そのまま村の通りへ着いていきます。
通りに面した家の窓辺に、それぞれ特徴のある
玩具を並べて売って居るようです。
車椅子のWさんは美術の先生です。
何か良い物を見つけてくれるでしょう。
僕の視力では、自力で物を見つける事は出来ません。
Wさんが見つけた物を触れせて貰い、説明をしてもらい
それで何とか理解出来ます。
木で造られた、雪だるまなどオーナメントを
幾つか買うことが出来ます。
お金は後から着いて来ている添乗員さんに見てもらって
支払う事が出来ます。

次は動物がモチーフの玩具です。
「犬のオブジェは有りませんか?」
「熊なら在りますよ」と、店員さんのお答えです。
うーん!熊と犬は違います。
トレイス君に似た犬のおもちゃ無いですか?

障害者ツアーのあるべき姿?

少し遅れ気味ですが、新雪に覆われた
可愛らしい村にザイフェンに到着です。
三角屋根に色とりどりに塗られた小窓
自然のクリスマスツリーに成っているモミの木
何げに庭木に設えられたイルミネーション、
何処を撮ってもクリスマスカードに成る風景です。
ちょっと嬉しく成ってキョロキョロです。
トレイス君も珍しい雪と沢山の人、
それにお散歩ワンちゃんも多いので興奮気味です。

すると添乗員さんがやって来て、
「車椅子のWさんと行って下さい」と、
僕と目の悪いご夫婦を、Wさんの車椅子に
つらなさせようとするのです。
此の程度の道だと、僕はトレイス君と歩けます。
でも、此処は少し上り坂で、シャーベット状の雪で、
滑ってこけそうです。
ではと、車椅子の取っ手に捕まらせてもらいます。
するとです。後から
「見て!此れが、此のツアーの有るべき姿よ!
障害者同士が助け合ってるでしょ」とか、言う
O女史の声が聞こえます。
でもなんか違うよな気がします。
僕の直ぐ後ろを添乗員さんが歩いているし、
O女史も一人で歩いているし・・・
車椅子は電動で押して上げる必要も無いのです。

百メートルほど歩いてレストランです。
大きなレストランの奥の部屋は全部日本人です。
メインディシュが何だったか思い出せませんが、
此処でも大きなもこもこするじゃがいもが
二個そえられています。
周りのの日本人かわも「芋ばかりだ」と、
苦情がが聞こえます。

寂れたドライブイン辺りで・・

時速百キロで2時間近く走った、
雪の原に、寂れた感じで在るドライブインで
トイレタイムです。
結局、全盲のお父さんと僕は、添乗員さんに
トイレに連れて行ってもらいます。
トイレから出てくると、トレイス君はTさんから
水を貰って飲んでます。
「ヒーちゃんが飲んでるの見て欲しそうだったから」と、
言われます。本当此処は暖房効き過ぎです。

お父さんはアイスを、僕はホットチョコレートを買うのも
添乗員さんに手伝ってもらいます。
ホットチョコレートは、コックを捻って
自分で紙コップに注がねば成りません。
「此れは見えないと難しいね」と、言うと、
「見えてても難しいよ」と、添乗員さんは言います。

さあ!メルヘンの国、おもちゃの村び向け再び出発です。
「あっ!」です。僕がバスに乗ろうとした時です。
トレイス君が、道路脇の水溜りに口を付けようとします。
すかさずO女史の「駄目、泥水飲ませては!」の、
声が飛びます。別に飲ませた訳ではないのですが・・・
それからバスに乗ってもぐちぐち言われます。
「泥水飲ませて下痢したらどうするの?
飛行機に乗れなくなって、帰れませんよ」です。

バスの運転手さんはミネラルウォーターを売ってます。
安全の為、トレイス君に毎日買ってます。
ベルリンでは一本一てん五ユーロでした、
きょうのドレスデンのバスはイチユーロです。
「安い!」良心的な値段です。取り合えず二本買って、
定期的に飲ませています。のにです・・・

バスはのろのろ運転に成ります。
アウトバーンを降りて、山の方に入ったようです。
時速百キロで走っていたのに、
雪も深くなって、今は四十キロです。

寒波です。

バスが走り出すと、添乗員さんから
今日のスケジュールの説明です。
これから四時間ほどかけておもちゃの村
ザイフェンに向かいます。

その後、O女史の話しが始ります。
「添乗員は皆さんのお世話をするので、個人的なお世話は出来ません」と、今朝の事の念押しです。
「障害者の方には要望があればボランティアの方を斡旋する事が出来ます。(ただし有料で十万円也をお支払い頂きます。今回の障害者の五名は自力でやっていくと言うことで参加です。サバイバルですよ」と、言ってます。
「普通の参加の方も6名居ます。皆さん高いお金と貴重な時間を使っての参加です。これらの方にお世話にはなれませんよ」
「障害者の方は障害者同士助け合う事で頑張って下さい」
「例えば車椅子の方が手の力を必要としている時、目の不自由な方は力を貸して上げて下さい、その代り車椅子の方は目の不自由な方の目に成って上げて下さい」と、
言うのです。
なーるほど、道理は合ってます。合っているけど、
どこかに釈然としないものを感じます。
バリアフリーツアーは、どうなってますか?
ドイツに寒波が押し寄せています。
僕の心にも寒波です。冷え冷えとした気分で心が凍えます。

ベルリン郊外に出ると、広がる原野は真っ白です。
アウトバーン沿いの林から、
兎や狐が走り出たり、鳥が飛びたったと、
喚声があがっています。
僕らはその童話の様な風景を想像するばかりです。

添乗員さんは皆の・・・

14日 朝です。
大型トランクも外に出して、
朝食の時間に成ります。
今朝は添乗員さんの迎えが有りません。
一人でレストランに向かいます。
エレベーターホールの所でポーターさんに出会います。
「リフトは何処ですか」と、聞くと、
エレベーターに乗せてくれ、
レストランまで案内してくれます。
大柄なポーターさんなので、腕を組まれると
何だか護送されて行く感じです。
レストランでウエイトレスさんに引き渡されます。
ウエイトレスさんが我らメンバーの席に案内してくれます。
もう皆さんも添乗員さんも揃って食べてます。
「うわ、わ、わ」と、焦った気分です。

するとです、其の時です。
此のツアーを企画したO女史がやってきてです。
言うのには「添乗員さんを当てにしないで」
「添乗員さんは皆さんのお世話をするので、
貴方だけの世話は出来ません」と、恐い顔です。
と、言われても此の薄暗いレストラン、
ランダムに置かれているテーブル、ごちゃごちゃした
バイキングの食品棚、如何すれば良いのか?
「英語が出来るでしょ」
「ウエイトレスさんに取ってきて貰いなさい」と、
またもO女史の指示です。

ではと、コーヒーを注ぎに来たウエイトレスさんに、
「ソーセージとハムと何か野菜と、
パンとジュースとヨーグルトを」と、お願いするとです。
傍で聞いていたO女史がです。
「そんなにいっぺんに言うと分らなくなるから、
取り合えず3つぐらいにしなさい」と、
またも指示です。指示ばかりです。

それでも朝食を無事終えて、出発です。
チェコ国境近くのメルヘンな街ザイフェンを観て、
エルベのフレェンツエ。ドレスデンに
ドレスデンから迎えのバスで向かいます。
ホテルの外に出ると、雪が降ってます。
マイナス3℃です。

早くも疲れが・・・

「昼食はまだー」と、バスの中に声が出ます。
12日、今朝は沢山見て回ったので、もう午後3時です。
昼食が随分遅くなりました。
壁博物館を出たあたりから、雨足も激しく成ってます。

街なかのレストランに入ります。
ドイツ名物、キャベツの酢で煮込んだのと、
大きなソーセージとウインナーです。
あ!それに
大きなジャガイモが丸ごと2個も添えられています。
味も濃くって、もこもこして食べ切れません。
後で知ったのですが、皆さんお持ち帰りしたようです。
四時荷に食事が終って外に出ると、早くも夕暮れです。
雨も降ってるせいで、直ぐ夜です。

これから午後は自由時間です。
僕は現代美術館に行ってみたかったです。が、
タクシーが拾えないとの事で諦めます。
バスはデパートに寄ります。
一人で見て回っても、何も分らないので、
結局はホテルに送ってもらいます。
我らは一日早く四国から出て来ています。
旅にでて3日目と言う事でとても疲れを感じます。
夕食は自由食です。で、何かを食べて寝る事にします。

昨夜は慌しく到着して、手探りで、様子も分りかねて
過ごしたベルリンのホテルはとても立派です。
今夜はゆっくりと部屋の中を探検です。
バスロープやスリッパも発見です。
2種類のシャワーの仕組みも発見です。
ゆっくりお風呂に入って、早々に寝ます。
トレイス君も寝息も立てないほどぐっすり寝ています。

夜中の3時に寝覚めます。
あっ!そうだ”明日の朝はこのホテルを出ます。
大型トランクは朝食前にドアの前まで出してください、と、
言われています。早速、荷造りです。
部屋に慣れたと思ったら、もう出発です。

戦火の後・ベルリン

12月12日(土)・ベルリン
小粒のみぞれ混じりの雨が降ってます。

長い11日はホテルに着いたのが夜中です。
それからトレイス君にご飯をあげたり、
(丁度、日本時間で朝食の時間でした)
冷えた体を温かいお湯で体を拭いて上げます。
「長い時間、ご苦労様です」と、寝かせます。
そして自分の入浴、明日の準備、
あれこれやっていると、余り眠れず朝です。
朝は部屋に添乗員さんが迎えに来てくれ、バイキングも
手伝ってもらいます。
此方の冬は野菜が無いのでしょうか?
ソーセージやハムが多く、サラダは有りません。

ベルリンの市内観光の始まりです。
トレイス君に防寒コートを着せて出掛けます。
「犬は毛が有るから、そんなのいらないんじゃないの」と、
折角、買って行ったのに不評です。えーです。

ガイドさんが言います。ドイツはペット税が在ります。
税を取られているのだから、道で落とした
犬のウンチを、市民の皆さんは片付けないそうです。
「オシッコは街路樹の根元でさせていいですよ」と、
言ってます。あー、安心です。

左右の歴史的建物の説明がガイドさんから有ります。
暗い曇天の下の景色は灰色に霞むばかりで
全然見えません。
「ブランデンブルグ門」です。
思っていたより小さくって、ひ弱な感じがします。
その前にも大きなクリスマスツリーが立っています。
ツリーの真ん中まで添乗員さんが連れて行ってくれて、
木の幹を触れさせてくれます。これは思いの他大きく
一抱え以上もある、生きているモミの木です。

ナチドイツに非協力的で有ったと、ドイツでは嫌われている
マレーネデートリッヒのお墓とか資料館にも行きます。
ポツダム広場や、東西ドイツを隔てていた壁とか、
壁博物館など戦火の痕を廻ります。

あ、そうそう!壁博物館では盲導犬入館拒否です。
ガイドさんや添乗員さんの長い説得で、やっと入館、
もしかして、それでは此処はトレイス君が、
一番最初に入った盲導犬なんでしょうか???