かあちゃんのカレー

 十才も年下の友人ですが、
子供の頃のカレーは肉無しで
竹輪が入っていた!と、言ってます。
随分遅くまで竹輪カレーが普及してたんですね。
 
 僕は戦後直ぐの生まれで、
幼い頃はまだまだ復興期です。

田舎で農家は自給自足の生活です。
 我が家の母の作るカレーも竹輪です。
それから魚肉ソーセージやハムになっていきます。
 一度 炒り子が入っていた時は閉口しました。
カレー風味の味噌汁みたいです。
僕は大の炒り子嫌いです。キラキラ光る皮が在るだけで
もう 吐きそうになります。
カレーは食べたし 炒り子は恐し!
カレーの中の炒り子の破片を取り除くのに悪戦苦闘
じぃちゃんは炒り子も栄養が有ると言って取り合ってくれないし、
二度と食べたくないカレーです。

 田舎にスーパーや肉屋が出来るのは其れからずーっと先です。
其の頃 肉と言えば、
飼っている鶏を自宅で絞めて、
其れが唯一の肉です。
 其れだって何年間に一度の事です。

 在る時、親戚から鳥を絞めたから食べに来い!と、
およばれの知らせがあります。
父と僕で喜んで飛んでいきます。
大人には鳥鍋、子供には鶏肉カレーが用意されてます。
でも、其の鳥って、
障害が有って、其の家の庭をひょこひょこと歩いていた鳥です。
肉を口に運ぶ時、其の鳥の悲しい様子が目に浮かび
とても食べ難かったです。
ありゃ遺憾のー!と、父も渋い顔で帰ります。
肉は元が判ると辛いです。

 それからインスタントルーもどんどん進化して
家庭のカレーも風味が増します。
僕がカレールーに煩くなると、
母はカレー作りを止めてしまい、
今日はかれーだよ!と、言った夜は、
流しにジャガイモ、玉葱、ニンジンが置いてあります。
僕は玉葱に涙を流しながら、
自力でカレーを作ります。

 かあちゃんはカレー作りを放棄です。
そのままあの世に行ってしまいました。
貧しい竹輪のカレーも懐かしい此の頃です。