病気の友

 糖尿病性網膜症の友達がいます。
ワン吉と話すと気が晴れる!と言ってます。
とうとう今年から透析を始めます。
透析はかなり苦しいらしい・・・
其の苦しげな声で電話を掛けてきます。
かなりやり手の実業家だったのですがすっかり弱気です。
弱気な人と話すのは余り好きではありません。
此方の生気も吸い取られそうで嫌です。
其の上、友は元実業家です。
態度は横柄で人の話は利きません。

 腹が立つので、三度に一度は怒ります。
怒ると次の日は、ちょっとしゅんとした感じです。
可愛そうだから此方も話しを聞いて上げます。
だのに次の日はもう横柄な口調です。
がみがみとお説教をしてやります。
そんな風ですが、糖尿病性網膜症の友の電話は
十年も続いているのです。

 時に一日、二日と電話が途切れる事が有ります。
病気が悪化したのだろうか?入院したのだろうか?
まさか死んじゃってはいないでしょうか?

 昨日 スーパーに行ったら、売り出しをやっていて、
ガードマンさんが立ってます。
ガードマンさんに話しかけられます。
うーん 誰かに似ている声とイントネーションです。
誰だ?誰だったろう?
あっ!そうです。十年来 音沙汰の無い友を思い出します。
急に懐かしくなって電話かけます。
最後に会ったのは何時だろう?
そんな事も思い出せない、遠い友です。
未だ電話は通じ、数回の呼び出しで友は出ます。
元気!って聞いたら、入院中だと答えます。
野太い感じの友でしたが、擦れ声で話します。
こないだからワン吉の事も如何してるか?と、思ってた!
と、ちょっと声を弾ませます!
久しぶりの電話喜んでくれたのでしょうか?
退院したら行くワ!と、言って電話が切れます。

 あっちこっちに病気の友です。