我が家の侵入者ー2

 あ 居たぞ!と隣のオジサンが抑えた声で言います。 心室に入っている様です。 急いで電灯のスイッチを入れます。
 近所の聾唖で 最近認知症が進み その人は俳諧が時々ある!と聞いては居ましたが・・ 視力も無くしているとの事でしたので・・ 我が家のほうには 来れるとは想えませんでした。
 オジサンが連れ出そうとすると 其の日とは 先年無くした奥さんの名前を呼び鳴きます。 奥さんの無く成った事が理解できていないそうです。 言葉に成らない声で 其れでも奥さんの名前は聞き取れます。 音も光も無い世界で ただただ 奥さんを頼りに老後を迎えていたのでしょうに・・ その声を聴いて居ると 胸が詰まって来ます。 背を撫でて上げると 立ち上がり オジサンに 連れられて帰って行きます。
 次の朝 ヘルパーさんが玄関わきに こんなものがありましたよ!と おおきな裁縫箱を持って入って来ます。  其の日とは 奥さんの形見の裁縫箱を持ち 白杖を着き 壁を伝い 奥さんを探していたのでしょうか?
 我が家の侵入事件が しんみりとした 後を残して いったんは解決しましたが・・ 想いものが残ってしまいました。