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2.四国中央 仙波さんの盲導犬トレイス引退へ 聖火リレーや啓発に活躍
2015年05月28日 愛媛新聞 朝刊 
 ある年は北京五輪の聖火リレーに参加、ある日は盲導犬への理解を深めても
らうための学校訪問―。そんな活動をしてきた盲導犬のトレイス(雄、9歳)
が6月に引退する。人間に換算すると70代のおじいちゃん。8年余りを共に
過ごした四国中央市妻鳥町の造形作家仙波慶伸さん(68)は「第二の人生を
普通の犬らしく、元気にのんびりしてほしい」と願う。
 仙波さんは5歳の時、暗い場所で物が見えにくくなったり、視野が狭くなっ
たりする進行性の難病と診断された。同居する家族はおらず、60歳を前に盲
導犬との生活を選び、トレイスとは2007年1月に大阪の訓練施設で出会っ
た。
 施設にいた約40匹から選ばれたのは、一番大柄のラブラドルレトリバー。
のんびりマイペースな上、「ちょっとしょぼっとしていた」。それでも翌朝、
顔をなめて起こしに来て「この子はうちの子だな」と情が湧いた。
 トレイスが来てからは市役所などへ歩いて出掛けることが増えた。当時市内
ではトレイス以外の盲導犬はほとんどおらず、法律で同伴が認められていて
も、タクシーの乗車拒否に遭ったり、スーパーで買い物客から白い目で見られ
たりしたこともあったという。
 後に続く人に環境を整えたいと一緒に学校を訪問。これまでに保育園を含め
延べ40カ所以上を訪れ、仙波さんの話を聞いた子どもや、子どもに話を伝え
聞いた大人から外で声を掛けられるようになった。08年には北京五輪の聖火
リレー走者として長野へ。運動が苦手な自分が走れたのは「トレイスがいたか
ら」と感謝する。
 トレイスは6月29日で10歳。子犬時代を世話した高知市の飼育のボラン
ティア「パピーウオーカー」の自宅で生活する見通しが立ち、引退させること
を決断。盲導犬ゆえ生活に制約が多かったため、「いろいろな物を食べたり、
他の犬と交流したり、楽しんでほしい」と願う。
 胴輪「ハーネス」を外し、あおむけでおなかを見せてじゃれ合う様子は子犬
のよう。「トレちゃんはのんびり、長生きするな」。仙波さんは元気な姿での
再会を待ち望んでいる。

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