抜歯!

グサ、グサ、グサッ
「チックとしますよ」と、医師の声と共に
奥歯の周りに注射針が打たれます。
最初の一本目はキリが突き立て
られた様な強い痛みです。
三度目あたりから、もう麻酔が効き始め
チク、チクに成ります。
すると唇の周りまでしびれてきます。

「はい、抜きますよ」と、言って
何かの器具を口の中に入てます。
ザックと切られた感じです。
ぱーっと口の中に血が溢れるのを
感じます。急いで
医師はガーゼで押さえます。

それから抜きに掛かるのですが、
なかなか根の張った奥歯は抜けません。
ゴリゴリ、ガリガリやっても抜けません。
医師は力いっぱいこぜます。
メリ、メリ、メリっ!顎が割れる。
「痛いですか!」と、医師が聞いてきます。
此れを痛いと言わず、何を痛いと言うのです。
昔、ナマ歯をやっとこで抜いた拷問を思います。

其の痛みが、待合室のトレイス君に通じるのか
クイーン、クィーンと泣きます。
もう一度麻酔薬を追加されます。

そして、医師は力の限りを尽くして、
グ、グ、グ、グウーイと引き抜きます。
歯の根は何処まで続いているのです。
体を突き抜け、椅子の足まで
続いている様な衝撃でやっと抜けます。