八年前の海に!

取材三日目の朝は、
五時十五分の日の出を目指して、
未だ明けない、暗い道を、
八年前の感動の海に向かって歩きます。
全然、知らない見当のつかない暗い道ですが、
トレ君は勇んで歩きます。
分岐路が有ると、後からディレクターさんから
「右、左」と、指示が出ます。
大きな松林に差し掛かります。
八年前は白杖で苦労して歩いた道です。
今日はトレ君が頑張ってくれます。
でも夏の林は蜘蛛の巣が多いです。
蜘蛛の糸が顔に絡んで気持ち悪いです。
二つ目の松林を貫けて海に出ます。
波の音が響いています。でも
僕の目には、砂浜も波うつ海も、空も
ただただ暗いばかりで、何も見えません。
八年前の輝く海は見えません。